【レポ】AIクリエイティブの最前線が集結。「AICA 2025」初開催、タイ伝統舞踊×AIを表現した初代グランプリ誕生!

更新日:2025/12/27 11:12
一般社団法人AICAは、2025年12月17日に開催した「AICA 2025 贈賞式」にて、初開催となるアワードのグランプリ作品およびAICA賞22作品を発表しました。贈賞式の様子をお届けします!

初開催となった「AICA」とは?

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グランプリ受賞者Pichet Klunchun氏・Pat Pataranutaporn氏と審査員陣
初開催となった「AICA(AI CREATIVE FUTURE AWARDS)」は、ジャンルを問わずAIによって新しい発想や社会的インパクトを生み出したプロジェクトを表彰するアワードです。
一般社団法人AICAが創設・主催し、テクノロジーとクリエイティブの関係を横断的に探求するクリエイター・研究者らを審査員として迎えて審査。
「ゼロ期」にあたる本年度は、AICA自ら世界中のAIクリエイティブをリサーチし表現の未来を示唆する作品群を選出、グランプリ1作品、AICA賞22作品が決定!
贈賞式には6ヶ国37名の受賞者たちが出席し、受賞の喜びを分かち合いました。

【グランプリ】タイ伝統舞踊×AI 仮想ダンスパートナープロジェクト

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Cyber Subin
初代グランプリとなったのは、作品名「Cyber Subin: Evolving Cultural Heritage through Human-AI Co-dancing」。直訳すると、「サイバー・スビン:人間とAIの共演を通して文化遺産を進化させる」。
サイボーグ心理学研究グループとダンスカンパニーが、伝統的なタイ舞踊に焦点を当てて、人間のダンサーをモデルにした仮想ダンスパートナーを制作。
「人間とAIの共同ダンス」の概念を提示し、仮想ダンスパートナーと一緒に即興演奏できるようにする相互作用的なシステムを開発しました。
音声制御機能が組み込まれているため、ダンサー、振付師、観客まで、仮想ダンスパートナーの振り付けの変更に参加できます。
作品名になっている「サイバー・スビン」は、サイバネティクス(生物学的、技術的、社会的システムを含むさまざまなシステムにおけるコミュニケーション、制御、フィードバックの原則に焦点を当てた研究分野)+スビン(タイ語で夢)を意味しています。まさに、生物と芸術の夢を創造した作品といえるでしょう。
審査講評は以下の通りです。
「タイの伝統舞踊とAIを結びつけ、人間とAIが共に踊るという挑戦的な試みを高く評価した。ダンサーの確かな技術によって、作品としてのダンスの質がしっかりと担保されている点も特筆に値する。また、タイ伝統舞踊の身体原理や所作をCG上でモデル化し、視覚的かつ分析的に提示している資料も非常に興味深く、文化的・技術的両面から新しい理解をもたらすものであった」
AICA賞22作品とそれぞれの審査講評は公式HPでぜひチェックしてみてください。

識者たちが本音で語る、生成AIとのリアルな距離感

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トークセッションに参加した審査員陣
贈賞式の後半には、今回審査員を務めた、清水 幹太氏(BASSDRUM テクニカルディレクター)、緒方 壽人氏(デザインエンジニア/Takramプロジェクトディレクター)、徳井 直生氏(アーティスト/AI研究者)、戸村 朝子氏(Art, Science and Society プロデューサー / 東京⼤学⼤学院情報学環 客員研究員 / 東京工科大学 客員教授)、三宅 陽一郎氏(立教大学大学院人工知能科学研究科 特任教授)、AKI INOMATA氏(アーティスト/武蔵野美術大学客員教授/デジタルハリウッド大学大学院特任准教授)の6人によるトークセッションが展開されました。
「普段、どのようなことに生成AIを使っていますか?」というテーマにおいて、AKI INOMATA氏は「リサーチに使います」としつつも、「ただ、結構嘘をつかれてしまうので、現代アートに関しては全く役に立ちません」という意見に、審査員はみな同意。
道順やレシピなど“普通のこと”を尋ねることには使うという他の声もあり、そのような使い方に一同納得の様子でした。
また、「生成AIの時代における『クリエイティブな映像』とは?」というテーマでは、戸村 朝子氏は今回のAICAの審査で「AI酔い(二日酔いのような感覚)」に陥ったことを明かしました。
AIはまだ未熟なところが多くあり、人間の脳が「こうであろう」と予測したことを裏切るために脳が疲れてしまうそう。
戸村氏は、「今生成しているものって、何か破綻していたり、我慢して受け止めている感じを超えないのかなと思っています」と述べた上で、「人ってものすごく繊細。なので心が動かされた、感動した、みたいなところはまだ人によるものだなと思います。AIはその過程でのスーパーアシスタント」と話しました。
戸村氏が“見る側”としてのAI作品について意見を述べた一方で、緒方氏は“作る側”として「AIは道具だと思っているし、そう思って使わないといけないと思う」と発言。
「人生が変わる作品が生まれるところまでは行っていない感じがしているので、AIは道具として使って最終的にアウトプットするというのは人間がやること。そのプロセスは根本的に変わっていないと思っています」と述べました。
AI識者による様々な意見が飛び交い、聞いている参加者にとっても実りのある活発なトークセッションとなりました。
尚、この度の受賞結果と審査の議論は、2026年初春刊行予定の「AICA白書」にて紹介予定となっています。
「Cyber Subin」クレジット:
Cyber Subin is a production of Pichet Klunchun Dance Company in collaboration with the Cyborg Psychology research group at the MIT Media Lab
Co-creator: Pichet Klunchun and Pat Pataranutaporn
Choreographer/Director: Pichet Klunchun
Dancers: Padung Jumpan, Tas Chongchadklang, Chang Hong Chung , King Fai Tsang
Music Director and Composer: Lamtharn Hantrakul
Cyborg Scientist/Human-AI Interaction Researcher: Pat Pataranutaporn
Creative Technologist: Phoomparin Mano, Chayapatr Archiwaranguprok
3D and Animation Creator: Piyaporn Bhongse-tong
Lighting Designer: Ray Tseng
Dramaturg: How Ngean Lim
Producer: Sojirat Singholka
Stage Manager: Jirach Eaimsa-Ard

東京都在住。趣味は美味しいものと旅行、現在薬膳を勉強中。

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