【レポ】テストの未来はデジタルへ。『デジタルテスト推進協会』が発足、教育評価のデジタル化を業界横断で推進

更新日:2025/11/04 14:50
2025年10月、東京都内で『一般社団法人 デジタルテスト推進協会(DITA)』の設立発表会が開催されました。教育評価や資格試験のあり方が大きく変化する今、デジタルテストの未来を描くために、デジタル庁の後援を受けて発足した本協会。その設立発表会の模様をレポートします。

テストのデジタル化を担う協会が誕生

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(左から)永井副理事長、デジタル庁 前田氏、佐藤理事長、文部科学省 橋爪氏、植野教授
テスト・試験をデジタル化することで、受験生や受講生の受験環境整備、公平な評価機会を社会に提供することを掲げ、設立された『一般社団法人 デジタルテスト推進協会』。
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佐藤理事長
協会の佐藤信也理事長は、近年、多くの検定や国家資格試験が紙からコンピューターへ、会場からオンラインへと移行するなかで、「公平性」「安全性」「受験者体験の向上」などの課題が顕在化していると指摘。こうした状況を受け、教育・試験業界の有識者や主要企業が結集し、協会を設立したと背景を説明しました。
さらに佐藤理事長は、デジタルテストとは実施段階だけではなく、受付から問題作成、本人認証、採点、認定証発行、データ分析までを含む“試験全体のエコシステム”であることを強調。デジタルテストを単なる“紙の置き換え”と捉えるのではなく、試験の質と利便性を新たな次元へと高める社会インフラづくりだと位置づけ、業界全体での連携を目的にしていることを述べました。
協会の取り組みとして、デジタルテストの研究・普及を通じてスムーズなデジタル化への移行を支援することを発表。具体的には、「デジタルテスト白書」の刊行(年1回更新)、行政機関・教育機関との連携および提言活動、AI活用による作問・採点の効率化、テストセキュリティやデジタル認定証制度の研究、定期的なセミナーや勉強会の開催等を実施するとのこと。
また、「アジアATPなどグローバルで活動しているテスト団体とも連携することで、海外の事例なども紹介していきたい」と佐藤理事長は話しました。

文科省・デジタル庁も期待を寄せる

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文部科学省 橋爪氏
来賓の文部科学省 大臣官房審議官 橋爪淳氏は、冒頭で協会設立への祝辞とともに「教育分野のデジタル化を適正に推進する業界団体の立ち上げに敬意を表します」と述べ、文部科学省で推進中のGIGAスクール構想をはじめ、全国学力学習状況調査のデジタル化、学習データの分析などを説明。「AI技術の進展により、学習や評価のあり方はさらに変化する。一方で、信頼性と安全性の確保が不可欠。協会には、このバランスを支える仕組みづくりを期待したい」と、『一般社団法人 デジタルテスト推進協会』へ期待を寄せました。
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デジタル庁 上仮屋氏
同じく来賓のデジタル庁 国民向けサービスグループ 審議官 上仮屋尚氏も、協会設立への祝意を述べながら「国家資格を中心に進むオンライン化の流れと、協会の取り組みは同じ方向を向いている」と強調。
デジタル庁では現在、約120の国家資格についてデジタル化を可能にする法整備を進めており、今後、試験・講習分野での実装を本格化させる予定だとのことで、「マイナンバーカードやスマートフォンを活用した本人確認など、国のインフラを連携させながら、公正かつ利便性の高い試験環境を実現していきたい。協会との協働を通じて、日本全体のデジタル化を推進したい」と述べました。

デジタルテスト白書2025が示す未来

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佐藤理事長からは本協会の要となる「デジタルテスト白書」について発表され、同白書はデジタルテストの現状と今後の展望を体系的にまとめた国内初の包括的な報告書で、全9章構成。定義から運用、AI活用、海外事例まで幅広く網羅。
同白書の中核となるのが、全国1,000人を対象に行われた受験者アンケートの分析とのことで、結果によると、83.8%が「自宅受験を希望」、64.4%が「随時受験を希望」と回答。時間や場所の自由度への期待が非常に高いことが明らかになりました。
一方で、操作ミスや通信トラブル、機器不良など、技術面への不安も一定数存在。佐藤理事長は「利便性を追求しながらも、安心して受験できる環境づくりが不可欠」と強調しました。
また、アメリカのSAT・ACTにおける完全CBT化や、EUでのデジタル証明書統一、シンガポール政府の主導による教育資格のオンライン化など、世界の先進事例も白書では紹介されています。こうした動向を踏まえ、佐藤理事長は日本でも「ID基盤やマイナンバー活用」「国際標準への準拠」「AIと人のハイブリッド監視モデルの導入」が鍵になると提言しました。
今後、白書は年1回のペースで改訂予定。協会では、プラチナ・ゴールド・シルバーの3ランク制による会員制度を設け、研究やセミナーを通じて知見を共有していくとのことです。

パネルディスカッションで語られた“期待と課題”

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設立発表会の後半には、「デジタルテストの潮流と未来」というテーマでパネルディスカッションを開催。
文部科学省から新免寛啓氏、岩瀬優氏、長屋美咲氏の3名が、デジタル庁から前田剛植氏、そして電気通信大学大学院情報処理工学研究所の植野真臣教授が登壇しました。
ファシリテーターを務めた佐藤理事長は、先述した「デジタルテスト白書」のアンケートで明らかになったデジタルテストへの期待度の高さを踏まえ、「時間的、空間的制約からの開放ができるデジタルテストについて、それぞれの立場でどのようにお感じになられるか、伺えればと思います」と、登壇者へ投げかけました。
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(左から)文部科学省 新免氏・岩瀬氏・長屋氏、デジタル庁 前田氏、植野教授
文部科学省の新免氏は「非常にプラスに捉えている」として、特に空間的制約からの解放について言及。令和7年度の学力・学習調査状況では、学校外にて実施した小学校児童が2,887名、中学生生徒が1,639名となり、自宅や教育センター、院内学級といった場所での受験があったと話しました。「大事なことは、子ども一人一人の学力、状況の把握を通じて、寄り添っていくことです。その意味からも空間的制約の解放は大きい」と述べました。
続いてデジタル庁の前田氏はデジタルテスト推進に賛成の意を示し、「デジタルテストそのものではないのですが、書類の準備や役所での受け取りなどの手続きの場面。その制約がデジタルになることで変わっていくことに、期待が高まっています」と話しました。
植野教授は「入試に関しては空間的制約ができるところまでは行っていない」としながらも、「大学の中のコンピュータールームで今は入試を行っていますので、収容人数を超えたら受験日を次の日へ、というようにできるようになると、何百人、何千人受験生が増えても対応できるようになる。狭い空間でも時間で回せるようになる」と時間的制約からの解放されるメリットを述べました。
デジタルテストへの期待感がとても高い一方で、デジタルテストの場合、「(紙のテストで慣れているため)操作ミスが心配」「通信トラブルや機器の不良への不安」といった声が非常に多く、特に年代が上がるほどその傾向があると、佐藤理事長。
こうした課題を共有・研究し、より快適で信頼性の高いデジタルテスト環境を整えていくことの重要性への認識も三者合意で話し合う場面もありました。
テスト・試験のデジタル化は単なる効率化ではなく、受験者にとってより良い学びと評価の体験を目指す動きだと実感できる発表会でした。教育評価の未来を支える新たな基盤として、『一般社団法人デジタルテスト推進協会』の今後の活動に注目が集まりそうです。

東京都在住。趣味は美味しいものと旅行、現在薬膳を勉強中。

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